人形の作り方

1体の人形が出来上がるまで

石膏型(モールド) モールド庫に保管された様々な石膏型
泥漿(スリップ) 原料の粘土(泥漿)は焼成することで磁器となる
グリーンウェア 鋳込み後、型抜きを終えて
はじめて面(おもて)が見える
泥漿(スリップ) グリーンウェアの背面
泥漿(スリップ) ゴーチェのグリーンウェア
泥漿(スリップ) 開型したモールドは風に当てて乾燥させる
グリーンウェア 陰干し中のグリーンウェア
泥漿(スリップ) ヘッド 天蓋部分のくり抜き
泥漿(スリップ) 目切りの前の処理
泥漿(スリップ) ヘッドとボディをつなぐ紐を通す
ためのネックホール
キルン(電気炉) ソフトビスクはグリーンウェアに比べると
水分が抜けた分白く見える
クリンナップ 目切り後のソフトビスク
(上の写真を目切りしたもの)
泥漿(スリップ) 目切り前のソフトビスク
泥漿(スリップ) 目切り後のソフトビスク
泥漿(スリップ) 目切り後のソフトビスク
グリーンウェア 1200℃以上の高温で2回目の焼成をする
泥漿(スリップ) すべらかな白磁の肌となったヘッド
泥漿(スリップ) ヘッドとボディパーツ
泥漿(スリップ) ボディパーツ
グリーンウェア メイクを重ねるたびに焼成を行うため、
まったく同じ顔を作ることは出来ない
オーバーウォッシュのみ 1回目 オーバーウォッシュ(肌の色付け)
オーバーウォッシュのみ 2回目 メイク前
睫毛のメイク 繊細な睫毛 これからアイラッシュを入れる
グラスアイを仮止め グラスアイを仮止めし、バランスを見る
眉や唇、鼻孔のメイク 眉や唇、鼻孔を薄く塗って焼成を行う
6回目のメイク 6回目のメイクで完成したブリュー・シャンドレ
グリーンウェア アイセッティングによって人形の表情は大きく変わる
ドレスづくりアニメ ドレスづくりの裏側で動き回るジュモーにも注目

泥漿から面(おもて)を形つくり、
幾多の工程を経て1体の人形が完成する
この無より有を生ずる喜びは何にも代えがたいものです

アンティークドールは数多くの手を通して作られた

アンティークドールが流行していた約150年前、ビスクドールは数多くの手を通して作られていました。
ヘッドのみ制作している工房もあれば、それだけでなくボディや衣装のすべてを制作する工房もあったようですが、工房の職人たちは泥から人型を取り、衣装を着るまでのすべての工程に携わっているわけではありませんでした。
絵付けひとつとっても、たとえば眉毛を描く仕事の人は、眉毛の絵筆のみを持って眉毛専門で描き続けるように、ビスクドールの制作工程は細かく分けられ、流れ作業で行っていたようです。

ジュモー人形工場の様子 La Nature誌(1888年3月10日号)に掲載されたジュモー人形工場の様子
『おもちゃの歴史 / 著フランソワ・テメル』より引用
ジュモー人形工場の様子 La Nature誌(1888年3月10日号)に掲載されたジュモー人形工場の様子
『おもちゃの歴史 / 著フランソワ・テメル』より引用

すべての工程を一人の手によって完結できる幸せ

翻って、現代のリプロダクターは19世紀に比べると制作に携わる範囲がかなり広がりました。衣裳のみ制作している方や、素焼き後のソフトビスクから制作を行う方もいらっしゃいます。
当アートビスクドール館に協力していただいている、ビスクドール作家である旅人容子氏の工房を例に挙げると、泥漿から型を取り焼成し、メイクや衣装に至るまですべてを作家ひとりの手によって担当しています。「すべての工程をわたくし一人の手によって完結できるなんて、いかに幸せなことか」と述べるように、磁器の原材料のどろどろした液体が、形をなし、やがてひとがたが、できあがっていく過程は、何にも代えがたい喜びであるのです。