お人形を迎えるにあたって、サイズはひとつの要素でないかと思います。作家の旅人氏も話すとおり、大きなお人形は、面積・ボリュームの分だけ繊細なメイクや描線を施すことができ、迫力や存在感の点でも、小さなお人形では表現しがたい魅力があります。もちろん小ぢんまりとしたお人形はそれだけでかわいいものです。住居事情から、ドールケースやキャビネットを何台も設置するのはなかなか難しく、かといってソファやベッドにお座りしてもらうのも少し不安があるなか、この子以外まったく目に入らないというほど強烈な一目惚れを除けば、一緒に生活する以上、大きさや取り回しを考慮される方もいらっしゃるのではないでしょうか。
前回のサイズ編ではアンティークドールの出来上がりサイズと、リプロダクトドールのボディサイズをご紹介しました。
続編となるサイズ編その②では、リプロダクトドールの出来上がり身長の計算方法や、ミレットやペティートサイズと呼ばれる小さいお人形たちについてご紹介します。
出来上がり身長を計算する際、大切なのは頭身がいくつかということです。
前回のサイズ編ではアンティークドールは出来上がり身長、リプロダクトドールはボディサイズの計算方法を記載したので分かりにくかったことと思います。べべドールは約5頭身なので、リプロダクトドールの場合は計算したボディサイズに1.2を乗算すればおおよその出来上がり身長を求めることが出来ます。
ただし、ビスクドールはヘッドとボディは完全に固定されたものではなく、作者や歴代のオーナーの好みによって付け替えることが出来るので、6頭身くらいの身長が高いすらっとした子もいれば、より幼く子どもらしい4頭身くらいのお人形もいます。特に小さいドールになるとヘッドとボディの縮小率の問題なのか、好みの問題なのかはたまた19世紀の流行が関係するのか、頭身にかなりばらつきがあります。
下記はきっちり5頭身と仮定し、アンティークドールおよびリプロダクトドール(シーリー社のコンポジションボディ)でそれぞれおおよその出来上がり身長を求めたものです。特にアンティークドールは個人的な見解がかなり入っていますので、あくまで参考程度にご覧ください。
大きさ(号数) | 大きさ(インチ) | 出来上がり身長 |
---|---|---|
1号 | 約10インチ | 25cm程度 |
2号 | 約11インチ | 27.5cm程度 |
3号 | 約12インチ | 30cm程度 |
4号 | 約13インチ | 32.5cm程度 |
5号 | 約14~15インチ | 35~37.5cm程度 |
6号 | 約16インチ | 40cm程度 |
7号 | 約17~18インチ | 42.5~45cm程度 |
8号 | 約19インチ | 47.5cm程度 |
9号 | 約20インチ | 50cm程度 |
10号 | 約21~22インチ | 52.5~55cm程度 |
11号 | 約23~24インチ | 57.5~60cm程度 |
12号 | 約25~26インチ | 62.5~65cm程度 |
ボディの大きさ(FB) | ボディの大きさ | ヘッドの大きさ | 出来上がり身長 |
---|---|---|---|
FB7 | 18cm程度 | 3.6cm程度 | 21.6cm程度 |
FB8 | 21cm程度 | 4.2cm程度 | 25.2cm程度 |
FB10 | 24cm程度 | 4.8cm程度 | 28.8cm程度 |
FB12 | 29cm程度 | 5.8cm程度 | 34.8cm程度 |
FB14 | 34cm程度 | 6.8cm程度 | 40.8cm程度 |
FB16 | 38~42cm程度 | 7.6~8.4cm程度 | 45.6~50.4cm程度 |
FB18 | 46cm程度 | 9.2cm程度 | 55.2cm程度 |
FB21.5 | 55cm程度 | 11cm程度 | 66cm程度 |
ボディの大きさ(GB) | ボディの大きさ | ヘッドの大きさ | 出来上がり身長 |
---|---|---|---|
GB7 | 18cm程度 | 3.6cm程度 | 21.6cm程度 |
GB8.75 | 22cm程度 | 4.4cm程度 | 26.4cm程度 |
GB10 | 26cm程度 | 5.2cm程度 | 31.2cm程度 |
GB12 | 30cm程度 | 6cm程度 | 36cm程度 |
GB13 | 33cm程度 | 6.6cm程度 | 36.6cm程度 |
GB15 | 35cm程度 | 7cm程度 | 42cm程度 |
GB18 | 46cm程度 | 9.2cm程度 | 55.2cm程度 |
GB21 | 55cm程度 | 11cm程度 | 66cm程度 |
手作りの1品ものという性質上、アンティークドールに全く同じものは存在せず、それは同じモールドで作られ、同じ絵付師がつくったビスクドールであっても同様です。
神谷圭子氏が寄稿したさわやかさわこさんの記事(骨董「緑青」 Vol.10)中には、さわこさんに非常によく似たエデンベベが紹介されていましたが、彼女たちが同時期に同じ石膏型(モールド)から抜き、同じ釜に入れ、同じ絵付師によってメイクをされたものだとしても、やはり少し違うのです。
例えるなら一卵性双生児であって、クローンではないといったところでしょうか。
この辺の詳しい話は過去のコラム「製造工程から見るビスクドールの大きさと顔立ち」に記載しておりますので、良ければご覧ください。
ヘッドと同様にボディも、コンポジションボディやオールビスクボディは石膏型からの抜き方や焼成時の火の当たり方、縮小率、キッドボディの場合は縫い方やおがくずの詰め方、ショルダープレートの大きさ、各ジョイント部分の噛み合い方で大きさが変わります。
さらにジュモーは全体的に首が細く長いのに対し、ブリュは首が短く太い、A・マルクは比較的お顔が小さいなど、ヘッドが同じ号数でもそもそもの大きさが異なっていることがありますので、ざっくりとした規格しかなかったのではないでしょうか。
特に5号や7号、10号以上になるとかなりのばらつきが見られます。WEBショップで公開されているビスクドールのヘッドの号数と実寸サイズを上の表と照らし合わせてみましたが、サイズ幅が大きい5号や7号、10号以上は実際のアンティークドールの実寸数値もばらつきがありました。
アンティークドールはヘッドに9と刻印されていれば9号サイズのボディをつなげていたようなのですが、まれにサイズの刻印があるものの適合サイズのボディを宛がうと不格好になるヘッドがあったようです。もしかしたらこのサイズ幅の大きい号数のお人形たちは、ヘッドとボディのナンバーが異なるものが多かったのかもしれません。
ギャラリーでご紹介しているお人形の中にはミレットサイズ(30cm程度以下)、ペティートサイズ(20cm以下)と記載しているものがあります。これはフレンチドールかつオールビスクボディのお人形のみを分類したものです。(写真は中央奥がミレットサイズ、両端の二人が8インチ)
その他にミニチュアサイズと呼ばれる約14cmのお人形やプチサイズ、タイニーサイズという大きさの分類があるんだそうです。
ちなみにギャラリーには8インチケストナーやベビードールもあるのですが、これらはジャーマンドールであることや、トドラーボディであることから、サイズによる分類が出来ないようです。